耳の症状
耳に不調を感じたら、まずは受診にいらしてください
急性中耳炎
風邪をひいた時、鼻水やのどについた細菌やウイルスが耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通って鼓室(中耳)へ入り炎症をおこす病気です。
感染は鼓膜の内側でおこるので、鼓膜に穴がないかぎり耳の外側から水が入るなどで感染することはありません。
およそ70%の子どもが3歳までに、少なくとも1回はかかると言われています。
これは子供の耳管が大人と比べて太く、短く、まっすぐで細菌などが中耳に入りやすいため、また大人に比べて抵抗力が弱いためです。
抵抗力がついてくる5歳ごろには、中耳炎になる事もへってきます。
症状
- 耳がいたい
- 耳がつまった感じ・聞こえにくい
- 発熱
- 耳だれが出る
- 不機嫌になる(小さいお子さんの場合)
- 耳を気にしてさわる、または泣く (小さいお子さんの場合)
治療
まずガイドラインに沿って抗生剤、消炎剤、点耳薬などの治療や、細菌の多い鼻水をすう鼻処置、吸入などの治療をします。
うみがたまっていて痛みが強い時には、鼓膜切開でうみを出すこともあります。
鼓膜切開の穴はほとんど数日で自然にとじます。
夜間に耳を痛がる時には
冷たいタオルなどで耳を冷やし、小児用バファリンなどの市販の痛み止めがあれば飲ませてあげると痛みが和やわらぎます。
耳だれが出ている時は、耳の入口のみを綿棒などでぬぐってください。
翌日できるだけ早く受診しましょう。
予防
抗生物質が効かない菌による急性中耳炎が増えてきています。
すぐ再発したり重症化することもありますので、完全に治るまで治療を続けましょう。
炎症が残っていると急性中耳炎をくり返したり、滲出性中耳炎や慢性中耳炎へ移行してしまうおそれがあります。
鼻水をすすったりせず、鼻の中をできるだけ清潔な状態にたもつことが中耳炎の予防につながります。風邪で色のついた鼻水が出る時は、受診をおすすめします。
滲出性中耳炎とは
滲出性中耳炎とは中耳に液体がたまり聞こえが悪くなる病気で、耳の痛みや発熱はありません。
小学校に入る前の90%の子供が一度はかかると言われていますが、6歳ごろから徐々にかかりにくくなっていきます。
特に3〜5歳の幼児がなりやすく、難聴が続くと言葉の発達に影響が出ることもあります。
小さな子供では呼んでも返事をしない、テレビの音を大きくするなどで気づかれることが多
いです。
原因
中耳は空洞で耳管(耳と鼻をつなぐ管)を通して換気をしていますが、耳管の働きが悪くなると換気できず、液体がしみ出してたまってしまいます。
鼻やのどの炎症、アレルギー性鼻炎、小さな子供の場合はアデノイドが、また高齢者では加齢により耳管の働きが悪くなることが原因になります。
成人の片側の滲出性中耳炎では、鼻の奥にある上咽頭の腫瘍が原因のこともあるので注意が必要です。
治療
鼻やのどの炎症をおさえる治療、お薬の内服、耳管通気などで耳管の働きをよくする治療を行います。
2〜3ヶ月の治療で改善が見られない場合は、鼓膜切開をして液体を吸いだしたり鼓膜の換気チューブを入れることが必要になることもあります。
成人やじっとできるお子さまは外来での鼓膜換気チューブ留置も可能ですが、小さなお子さまの場合は動いてしまうといけないので全身麻酔が必要になります。
その場合、近隣の入院可能な医療機関に紹介いたします。
慢性中耳炎
急性中耳炎を何度もくり返したり治りきらなかったりすることで鼓膜に穴があいたままになり、中耳の炎症が慢性化する(長く続く)ものです。
症状
主な症状は、くり返す耳だれや難聴です。一般的には耳の痛みはありません。
慢性中耳炎にはそのほか、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎があります。
耳と鼻をつなぐ耳管の働きが悪いと中耳腔の換気ができず、鼓膜が内側にへこんでしまいます。
中耳の壁にへこんだ鼓膜がくっついて離れなくなったものを癒着性中耳炎といいます。
へこんだ鼓膜に耳あかがたまり細菌が住み着いて真珠のような白い塊になったものを、真珠腫性中耳炎といいます。
真珠腫は「できもの」ではなく耳あかなのですが周囲の骨をとかし、難聴やめまい、ひどくなると顔の筋肉を動かす顔面神経の麻痺、脳に進むと髄膜炎や脳膿瘍を起こす場合もあります。
治療
炎症をおさえ耳だれを止めること、難聴を出来るだけ治すことを目標にします。
まず抗生物質の点耳、内服で細菌が増えるのをおさえます。
必要に応じ根本的な手術を行い、換気が良くなるようにしたり壊れた骨(耳小骨)を作り直します。
手術が必要な場合は、近隣の手術可能な医療機関に紹介いたします。
外耳炎
耳の穴から鼓膜までを外耳道といい、それをおおう皮膚はうすく刺激に敏感です
耳そうじのしすぎで傷がつきやすく、細菌が感染することで外耳炎になります。
水泳や入浴で傷のある耳の中に水が入ることや、補聴器や長い時間使用のイヤホンの刺激が外耳炎の原因になります。
放置されている耳かきに空気中に浮かんでいる真菌(カビ)胞子がついていることがあり
それで耳かきをすることで耳の傷にカビがつき、治りがわるくなることがあります。
またアトピー体質の方は湿疹になりやすく、糖尿病の方など免疫力が低下していると骨がこわされる悪性外耳道炎になることもあります。
症状
かゆみ、耳痛、耳だれなどで、ひどくなると難聴になる場合もあります。
症状が軽ければ1〜3日で治癒しますが、耳かきがくせになっている場合は長引くこともあります。
免疫が低い方が重症化すると、強い耳痛、発熱、顔面麻痺が見られることもあります。
治療
外耳道にたまったうみをそうじし、抗生物質やステロイド入りの軟膏や点耳をします。
カビの場合は抗真菌薬の軟膏や点耳をします。
かゆみが強ければ抗アレルギー剤、痛みが強ければ鎮痛薬を処方します。
耳そうじが一番多い原因なので何度もそうじをしない、耳の奥を触らないように気をつけましょう。
難聴
急に、あるいはだんだん聞こえにくくなった状態を難聴と言います。
会話が聞き取りにくくなった
テレビの音が大きくなったと言われた
耳がつまった感じがする
耳鳴りがする
などで気づくことが多いです。
音は、外耳、中耳、内耳と順に伝わり、脳神経をへて脳に信号として伝えられ音と認識します。その経路のどこかで障害が起こると、聞こえが悪くなります。
耳あか、中耳炎、突発性難聴、生まれつきの先天難聴、脳腫瘍、大きい音を聞いたり仕事などで大きい音を聞く環境にいる、老化によるものなど原因は様々です。
早く治療しないと治りが悪くなるもの、CT、MRIなどのくわしい検査が必要なものもありますので、聞こえの悪さに気づいたらお早めにご相談ください。
耳あか
耳あかは、古くなってはがれた皮膚、汗や油などの分泌物や、ほこりなどが混ざったもので、通常は自然に体の外に出されます。
そのため、基本的に耳そうじは不要とされています。
また耳あかには殺菌作用があり、細菌や真菌(カビ)を育ちにくくし、耳を保護する作用もあるため完全に取りのぞかなくても大丈夫です。
耳そうじはすっきりすると同時に気持ちよさを生じさせる「迷走神経」を刺激するため、クセになりやめられない方もいらっしゃいます。
しかし耳の穴から1cm以上奥は、骨部外耳道といって皮膚が薄くとても傷つきやすいためさわりすぎると外耳炎や外耳湿疹になりやすいです。また鼓膜に傷や穴を開けてしまうこともあり注意が必要です。
受診の目安
耳あかが、たまりやすい人は
- ネバネバした湿性耳垢の方(日本人などの黄色人種は遺伝的に約2割の方)
- 外耳道の小さい子ども
- 耳あかを出す力が弱くなった高齢者
病的に耳あかがたまる場合は耳垢塞栓(じこうそくせん)と言い、聞こえが悪くなったり痛みが出たりします。
耳をふさぐほどの耳あかは、ご家庭でとるのは難しく(特にお子さま)傷をつけてしまうこともあり危険ですので耳鼻咽喉科を受診してください。
固まった耳あかを無理に取りのぞこうとすると痛みをともなう事もあるため、耳垢水という液体をご自宅でさしていただき、ふやかしてから次回に除去することもあります。
高齢者(80歳以上の場合)の50%以上が、耳あかにより聞こえが悪くなっていると言われています。
音の刺激が脳に伝わらなくなると、認知症の発症や進行に影響すると考えられています。
認知症予防のためにも聞こえにくさを感じられたら、受診することをおすすめします。
自分で耳そうじをする方法
耳の穴の入口から1cm位までを、赤ちゃん用の細い綿棒でふき取る程度で十分です。
大きい綿棒を耳の奥まで入れることで耳あかを鼓膜のほうまで押し込み、結果的に耳あかがたまってしまうこともあります。